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フィリピン留学体験記その3 空港へ向かうタクシーでのちょっとした小話

翌日。空港へ向かうためにタクシーへ乗り込んだ。ホテルで手配してもらったタクシーだからか、キチンとメーターを使い、値段をふっかけるようなこともしない。気さくに話しかけてくるドライバーに少し心を開き、色々フィリピンであったこと、思った事など話した。

マニラで金を盗られた事など話すとひどく同情してくれて、

「ほとんどのフィリピン人はいい人なんだ、たまにそういう悪い奴もいるけどなー。」

ということを彼は言い、僕は、

「そうだ。ほんの一部分だけをみて勝手に決めつけたりするのは良くないことだ。これはたまたま僕の運が悪かっただけなのかもしれない、きっとこの街には沢山いい人がいるのだろう。」

と心の中でつぶやいた。

実際バギオにはいい人しかいなかったし。なんなら僕の日頃の行いが悪かったのか

会話の流れの中で彼は何気なく僕に飴ちゃんをくれた。キチンと袋から開けたものであるが僕は少し舐めると気付かれないように吐き出した。彼が違う色の袋を飴ちゃんを選んで食べたからだ。もう自分でもびっくりするほど人を信じられなくなっていたのだ。実際とても失礼なことをしたと思う。

そんなこんなで、ようやく空港が視界に入って来た。

やっとこんな街から抜け出す事が出来るんだ。そう思った僕に彼はこう言った。

「そうだ、マイフレンド。俺はお前はトモダチだ。俺はお前の事をいつまでも覚えていたい。だからここで出会ったその記念に、お前の国のお札を俺にくれないか?いやいや、これはあくまで記念だから決して換金したりはしない。財布に常に入れておいて、ふとした拍子に思い出せるようにしておきたいだけなんだ。いいだろう?マイフレンド。」

僕は大きい金しか持っていないから流石にそれは無理だと言うと、

「俺は大きい金の方が好きだ、構わない。それにこれはただの記念だ。金額の大小は問題じゃないんだ。わかるだろう?マイフレンド。」

釣りは要らぬと言いタクシー代を払うと、それでもまだ円をくれと言うので僕は財布から100円玉を取り出し黙ってそれをくれてやった。

去り行くタクシーに手を振り、その先の、どこまでも続きそうな青空を見上げて僕はこうつぶやいた。

「そうだ。ほんの一部分だけをみて勝手に決めつけたりするのは良くないことだ。これはたまたま僕の運が悪かっただけなのかもしれない、きっとこの街には沢山いい人がいるのだろう。」

きっと。

(完)

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