The Hellacopters
90年代半ば、スウェーデンのデスメタルシーンから突如あらわれた、ロックンロールバンド”The Hellacopters”。
EntombedというデスメタルバンドのドラマーだったニッケとBackyard Babiesのギターのドレゲンがどこかのフェスのバックステージで出会い、大のKISSファンというとこで意気投合したところから始まった、というのが定説。
その後、ニッケの幼馴染のケニーと、Entombedのローディだったロバンをを含めた4人でThe Hellacopters結成。
Entombedがレコード会社と揉めて裁判なんかしている間に、(一応)サイドプロジェクトとして始まる。
メンバー
右から
Nicke Andersson (ニッケアンダーソン。最近ニッケアンデションという表記を見かけるようになったが、いつからそうなったのだろうか?以下ニッケ) Vo,Gu
Kenny Håkansson(ケニー) Ba
Dregen(ドレゲン) Gu
Matz Robert Eriksson(ロバン) Dr
ちなみに初期のHellacoptersはNicke Hellacopter、Dregen Hellacopterといったように、Ramonesよろしくメンバーの姓名をみんなHellacopterに統一していました。
さらにシングルNowの場合にいたっては、ミドルネームにLeeが加わり、なぜかメンバー表記がBruce Lee Hellacopter(Dr)、Jerry Lee Hellacopter(Gu Vo)、John Lee Hellacopter(Ba)、David Lee Hellacopter(Vo Gu)となってます。Kissのトリビュートアルバム参加時にはそれぞれ、Gene Hellacopter、Peter Hellacopter、Ace Hellacopter、Paul Hellacopterという名義になっています。
さらに余談ですが、Ramonesという名前はPaul McCartneyがSilver Beatle時代に使っていたPaul Ramoneという名前からとったものです。
サウンドは一言で言うと、汗臭い、ロックンロール成分多めのガレージパンクというか、日本では爆走ロックンロールとかいうくくりで扱われることが多かったHellacopters。
Kiss、MC5、Stooges、Radio Birdman、Motorheadあたりのサウンドが引き合いに出されますが、そのどれとも似ていない、独自のロックンロールを発明したのは、Action RockとかHigh Energy R&Rとか言われるジャンルの中心にHellacoptersが存在していることからも間違いないでしょう。
Supershitty to the Max!
たった3回のリハーサルの後に録音された1st singleのKilling Allan、2nd single1995のリリースの後、1996年6月にリリースされたこの1stアルバムSupershitty to the Max! は、スウェーデンのグラミー賞でHard Rock/Metal of the Yearを受賞しました。
Tomas SkogsbergのSunlight Studioでわずか26時間でレコーディングされたという事実が物語るように、非常に荒々しいサウンドに仕上がっております。
おそらく一発録り。機材をセッティングしたらアンプのヴォリュームをフルにして、音はでかければでかいほうがいいというスパイナルタップのようなアティチュードで、そのまま一曲目から最後まで一気に録ったかのような、悪く言えば一本調子、良く言えば非常にライブ感のあるアルバムです。
何はともあれ1曲目、The Texas Chainsaw Massacre 2のサンプリングから始まる(Gotta Get Some Action) NOW!を聞いてもらえば、バンドの雰囲気といったものが一発で伝わるでしょう。
YouTubeでは冒頭のサンプリングがカットされていました。
1stアルバムの1曲目にバンド史上最高の曲を持ってこれるバンドはそうそういません。とまで言うのはちょっと言い過ぎですが、名曲名演は数多くあれども、Hellacoptersの代表曲といえばこの曲、ということで特に異論はないと思われます。
そして、まさに爆走といった形容詞がぴったりな24h hellや。
90秒のガレージロックンロールFire Fire Fire。
ライブでは欠かせないBorn Broke。
と続いていきます。
また、Such a blastではロバンが、Didn't stop usではドレゲンがヴォーカルをとり、How could I careのヴォーカルはNick Vahlberg、Ain't no timeのギターソロはHans ÖstlundというスウェーデンのガレージバンドNomadsのメンバーも参加しています。
日本盤にはMisfitsのBulletのカバーも収録。
さらにアナログ盤だけにはNew York DollsのIt's too late収録。
ちなみにこのCDのジャケットには、Ever got the feelin' you've been cheated?というSex PistolsのラストライブにおけるJohny Rottenのセリフを引用して、わざわざ自分達のCDを買ってくれたファン(の中のCDしか買わない人たち)に対し、いかにCDがクソみたいなもので、どれだけアナログレコードが素晴らしいかということが、延々と書きつづられています。
さらにもっとどうでもいい情報をも一つ。彼らの代表曲(Gotta Get Some Action)Now!にはニッケやドレゲンも参加しているKurt-Sunes & Helveteshundarnaというバンドの(Komma Ut Ur Matchen) Nu!というスウェーデン語バージョンもあります。
コマウテマチェ ヌー!というコーラスがクセになります。
先ほどはHellacoptersのサウンドは他のどのバンドにも似ていないという話をしましたが、一つだけ挙げるとするならUnion Carbide Productionsというスウェーデンのガレージバンドの、特に1987年の1stアルバムIn the air tonightからの影響大きいと思われます。
スネアドラムを裏拍に持ってきてシンコペーションさせるような、Hellacoptersの特徴的なリズムパターンはこのバンドから拝借したものではないでしょうか。
ところでさっきから私が、ちなみにとか、余談ですがとか、どうでもいいような情報をを連発しているのは、そもそもHellacoptersというバンドが、そういう大半の人にとってはどうでもいいようなこだわりや、マニアしか喜ばないような小ネタを引用したりすることや、誰も知らないバンドの誰も知らない曲をレコーディングしたりすることに、過剰に情熱を注ぐバンドだからということで、皆様ご了承いただきたい。
CDを酷評するくらいだからかどうか知りませんが、初期の曲はSpotifyなどのストリーミングサービスにアップされていません。聞きたい方は現物を手に入れましょう。↓
収録曲
(Gotta Get Some Action) NOW!
24h Hell
Fire, Fire, Fire
Born Broke
Bore Me
It's too late(アナログ盤のみ)
Tab
Bullet(日本盤のみ)
How Could I Care
Didn't Stop Us
Random Riot
Fake Baby
Ain't No Time
Such a Blast
Spock in My Rocket
メンバー集まったら曲を作る。曲を作ったらすぐレコーディング。小賢しい戦略や将来の展望などなく、ただ好きなことを、今できることを、ただやる。少しでもよく見せようという気持ちもはこれっぽっちもなく、それが世間にどう受け入れられようと知ったこっちゃない。と同時に、そこからしか何も始まらないことを知っている。We gotta get some action right NOW。
ここにはそんな、ロックンロールバンドの1stアルバムに必要なものは全て詰まっているのではないでしょうか。
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The Hellacopters / Payin' the Dues
Payin' the Dues 1997年10月の2ndアルバムPayin' the Dues。 プロデューサーは1stアルバムに続いてTomas Skogsberg。実際のところはプロデューサーとい ...
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